瀬戸内醸造所 竹原直売所
SETOUCHI JOZOJO TAKEHARA Shop
地域が継承してきた空間形式と素材で“新しさ”をつくる

本計画は、竹原市の重要伝統的建造物群保存地区に位置する、地元住民と旅人の交流機能を兼ねた瀬戸内醸造所の販売拠点。この地域の歴史性によって、新しい交流や活動を支える商店空間の在り方を目指した。

先ず、100年単位で改修されている既存古民家の部材のひとつひとつを取捨選択し、木軸の補強、土壁の追加、解体などを行い、数百年単位の時間軸が重層する空間をつくった。さらに、どっしりとした木軸グリッドの街並みと、古民家内部に対比させるように、竹原特産のレンガ螺旋状に配置した。螺旋什器は変化する形態に沿って、展示台や受付カウンター、デスクやベンチなど様々な機能を持ち、木造グリッドとの配置関係で、様々な奥行きや連続性を生みだしている。

この地域が継承してきた空間形式と素材を活用することで、生成された多用途可能にする空間は、この場所唯一の体験と、様々な業態変化を許容する、地域性と事業性の “新しい関係”を提示している。

瀬戸内醸造所 三原市のワイナリーと竹原本社
地域間の交流と回遊性を誘発するmicro public network

瀬戸内を「旅するワイナリー」を目指す瀬戸内醸造所は、竹原市と三原市にまたがって事業拠点を構えている。各拠点がバラバラの目的地になるのではなく、その2拠点の空間体験とこれを結ぶ国道185号線の島並みの風景を一体的に捉えたブランド体験の生成を目指している。ここで求められる空間体験は、各拠点が個性を持った唯一の体験であると同時に、全体としてまとまりのあるブランド体験である。本計画では、地域の個性的素材を転用し、新しい価値に転換する「ワイン」の手法を採用し、「土地をめぐり、土地を味わう」体験を通して個性と統一感のある物語を両立している。

商業空間でありながら地域交流を支える瀬戸内醸造所は、2つの自治体を中心に瀬戸内全体の新しい循環と産業の創出を視野に入れた広域連携の地域拠点であり、弊社が全国で手掛けている、地域の回遊と活動を誘発する民営による公共的空間とそのネットワークである「micro public network」の実践といえる。

Data Sheet
  • クリエイティブディレクション
    SUGAWARADAISUKE建築事務所 (菅原大輔)
  • コンセプトデザイン
    SUGAWARADAISUKE建築事務所(菅原大輔、藤坂美佳)
  • 実施設計
    SUGAWARADAISUKE建築事務所 (担当:菅原大輔、藤坂美佳)+山根建設(担当:山根積)
  • クライアント
    瀬戸内醸造所株式会社
  • 施工
    山根建設
  • 写真
    阿野太一
  • 設計期間
    2020.11-2021.01
  • 工事期間
    2021.01-2021.03