浦安鉄鋼団地は、高度経済成長期に合わせて発展した工場の集積地として整備された。しかし、産業構造の変化とその立地から、「ラストワンマイル」の物流拠点のニーズが高まっている。本計画は、そんな場所と人間の物語を体現する、鉄工所から物流倉庫への建替えである。
敷地は、前面道路にバス停を備え、かつ海岸線に面した特殊な場所である。そこで、緑化条例を積極的に活用することで、「3つの庭」と「バス待合所」と「海のテラス」を計画した。これによって、この地域の海と土地と人間の物語と風景を継承した、まちに開かれた人々の居場所づくりを目指した。
道路沿いに広がる「道の庭」は常緑植栽を中心とし、無機質な工業団地のなかで通行人とバスを待つ人に癒しと安らぎを与える。「道の庭」に構える「バス待合所」は、工事の残土による洞窟のような待合いボリュームと、軽やかな大屋根による半屋外空間で構成しており、様々な庭の色づきや開放感を持った休憩エリアをつくりだしている。また、鏡面天井は、植物やまちを映しこみ、この土地に流れる様々な時間を増幅する環境装置となる。地域の人々に開放されている「四季の庭」は、四季折々の変化が楽しめる樹種で構成し、植栽を縫うように進むヒューマンスケールの通り庭とすることで、物流施設本館までの、豊かなシーンをつくりだす。東京湾に面する「海の庭」と「海のテラス」は、本施設の従業員に憩いの場を提供するだけでなく、かつて東京の表であった水辺に、まちの新しい顔を取り戻すことを目指した。海風に強いトロピカルな植物によって、眺めても楽しい特徴的な表情を目指した。
この地域の海と土地と人間の関係を細やかな設えによって編み直すことで、無機質でメガスケールな工業団地の中に、人々のための居場所をつくりだした。それは、東京湾とそこで鉄工業を営んでいたクライアントの物語を継承しつつ、場所の特徴と価値を拡張した、浦安鉄鋼団地の未来の風景をつくっている。
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クリエイティブディレクションSUGAWARADAISUKE 建築事務所 (担当:菅原大輔)
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コンセプトデザインSUGAWARADAISUKE 建築事務所 (担当:菅原大輔、藤坂美佳)
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建築設計SUGAWARADAISUKE 建築事務所 (担当:菅原大輔、藤坂美佳/設計・監理 上田将之/設計)
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構造設計テクトニカ (担当:鈴木芳典、鶴田翔)
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設備設計西松建設
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外構計画GA ヤマザキ (担当:山﨑誠子、岩男宏美)
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照明計画灯デザイン (担当:早川亜紀)
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左官ぬり貫
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クライアント株式会社アライプロバンス
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施工西松建設
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写真楠瀬友将
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場所千葉県浦安市港69
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主な用途バス待合所、ランドスケープ、休憩所
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設計期間2021.01_2021.05
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工事期間2021.07_2021.10
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敷地面積14,878.49m2
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建築面積35.12m2
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延床面積27.33m2
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高さ最高高さ 4285mm
2023architecturephoto® 掲載 /日本
2023商店建築2023年5月号 掲載 /日本
2022第2回「新しい建築の楽しさ2020s」展 /日本
2022物流ニュースサイト“LOGISTICS TODAY” /日本