素材色彩研究所MATECO。そのレクチャーシリーズVol.3の登壇に合わせて、金属の特性を活かした「金属の玉手箱」の製作依頼を受けた。
わたしは、金属は表面で時を捕まえる素材だと考えている。鏡面仕上げは瞬間の移ろいを、腐食は積層する時間を捕まえる。この金属的時間を表現するために、玉手箱を2つの時計で構成することにした。それは、文字盤が金属の鏡面仕上げになった時計と、その完成の瞬間を切取った写真の中の時計である。写真の中の時計は止まった時の中で宙吊りにされている。その一方で、現実の時計は経年変化と共に鏡面仕上げの輝きを失い、その表面を腐食させながら自然の摂理に身を委ねている。木箱に収められたこの2つの時計は、その間に積層した時の存在を露わにする。
日本人が幼少期から親しむ「浦島太郎」。その玉手箱には、抽象的な時間感覚が埋め込まれていたことを、この木箱は気づかせてくれるのである。

Data Sheet
  • 企画
    MATECO 加藤幸枝
  • デザイン
    SUGAWARADAISUKE
  • 製作協力
    金森三恵子